ポルトガル人の末裔達が受け継いだ伝統料理!『カノムチンゲーンガイクア』


ขนมจีนแกงไก่คั่ว カノムチンゲーンガイクア
ポルトガル風鶏炒りカノムチン

タイの下町、トンブリー地区にポルトガル人の末裔たちが文字通りひっそり暮らすエリアがある。そのエリアの名前は「グティジーン」地区。ポルトガル人が住んでいた場所なのに、「中国僧房地区」という名前なのがまたややこしいけれど、この辺りには中国寺院もあって、お坊さんがすむ宿舎もあったのね。(タイ語では僧侶が住む宿舎のことを「グティプラ」と言う。)

トンブリー王朝時代、潮州出身の華僑と同様にタイに呼び寄せられたポルトガル人傭兵たちがいた。ビルマと戦い王朝設立に貢献したとして、当時の王タークシンは彼らにタイで永住するための土地を与えた。その末裔たちが今でもひっそりと暮らすのがこのエリアなのだ。実は5年前にもこの地区を訪れ、紹介したことがあるよ。

当時はあまり観光地化されていない印象だったけれど、今回は集団で訪れるチャリンコ団体を何度も見かけた。主にタイ人向けのちょっとした観光スポットになっているみたい。

この地区を代表する、象徴的な建物がこの「サンタクルーズ教会」。タイのバンコクとは思えない、しっかりした造りの教会だ。
残念ながら中には入れないけれど…。


周辺にはマリア像やキルスト像があちこちに設置されている。東南アジアの仏教国タイで、マリア像とタイ文字が同時に拝めるのはこの地区ぐらいだろう。
前回訪れたときより、塗り直されて綺麗になっていたよ。


サンタクルーズ教会前景。
写真を撮ってみて気がついた。タイのお寺って「川に面した側が正面入り口」ってよく言われるけれど、この教会も全く同じことになっている。きちんと川に面した側に、正門があるのだ。
このことからも、この教会がまだ道路が未整備で川上での交通がメインだった時代からある、由緒正しい教会だということがわかるね。


教会周辺にあったマリア様を、改めて拝顔…。


この、サンタクルーズ教会の真ん前(海に面した正面)にあったのが、「ヘーローノムソッド(ハローミルク)」という名前のカフェだった。
前回来た時もあったのかな?気がつかなかったなぁ。

一見、ミルクとかワッフルとか売っている、タイならどこにでもあるカフェのようだけれど…。


一番上に書かれたメニューが実は独特!ここのお店の名物は、ポルトガルの祖先から受け継いだ『カノムチンゲーンガイクア」という伝統料理なのだ。

ポルトガルの祖先から受け継いだのにカノムチンなのか!どんな料理なんだろ?気になるねこれは!


お店は小さくて、店の中も誰かのお家にお邪魔したかのような雰囲気。

窓際の一番気分のいい席に座る事ができたよ。


この地区の文化を守り、歴史を伝えようとする団体もあるようで、こうしたポスターも作られていた。
「シグネチャー オブ グティジン ブレンデッドカルチャー」と書かれているね。

グティジン地区のポルトガルとタイが混じり合ったカルチャーを体現する、おすすめの一品がこの「カノムチンゲーンクアガイ」というわけだ。


メニューには、カノムチンゲーンクアガイについて、もう少し細かい事が書かれていた。このメニューはもともと祝祭やおめでたい式などがあるときに作られていたそうで、作るのも大変なので食べることができる場所は現在ほとんどないんだとか。また、この料理が自分のルーツを体現するものだと自覚して、料理を継承しようとする人がそんなにいなくなってしまったために作られることも少なくなってしまったらしい。

たしかに、身近にあるものってそれが自分たちの地域にしかないものだって自覚するのは難しいよね。日本でも「とり天」とか「ローメン」とか、地味過ぎてその地域を代表する食べ物だって気付かれてなかったものが「再発見」されてメディアに取り上げられるようになったのはごく最近な気がする。

最後の一文にはカノムチンゲーンガイクアはポルトガル文化を代表する一品だ、みたいな事が書いてあるけれど流石にポルトガル本土にカノムチンは無いと思うので、この(ポルトガルの文化を継承した)地域を代表する料理って事だろうと思う多分。

ここでしか食べられない、非常に貴重なカノムチンのお姿が…こちら!

見た目はタイのどこにでもあるカノムチンと、そんなに変わらないかも。でも、鶏肉が盛られたその姿は西洋料理のスパゲッティーボロネーゼに似ていると言えなくもない。


タイにパスタが無かった時代には、カノムチンで代用するしかなかったかもしれないし、その他の材料もいろいろタイにある食材に置き換えられながら、定着した料理がこの「ケノムチンゲーンガイクア」なのかもしれないね。

世の中にある他のカノムチンと比べ、明らかにちがうのは写真にも映っている独特の黄色い唐辛子のソースがつくこと。これもサフランか何かの「代用」が、そのまま根づいちゃったものなのだろうか。


パクッと食べると‥。うん、カノムチンとココナッツミルク仕立てのスープの取り合わせは西洋料理的な風味がなく、どこまでもタイ料理の味わいだ。唐辛子がピリ辛で効いていて、鶏肉のすり身が入っている。黄色い唐辛子のソースをかけると、さらにピリ辛度が増す。

タイ料理に近い味わいでも、それでもポルトガルから来た人達たちにとっては祖国の雰囲気が楽める料理だったのかもしれないね。


そんな風に歴史に想いを馳せながら、カノムチンを食べた後は飲み物を飲んで、ちょっと一息。
この後も小旅行はまだまだ続く…。

グティジン地区の1日トリップはとっても面白かったので、3部構成でお届けする予定。次回はこの地区を代表する有名なお菓子を紹介するよ!

お店の場所と地図

店名:ヘーローノムソッド(เฮโล นมสด)
営業時間:11:00-18:00 (土日は9時からオープン)
行き方: チャオプラヤエクスプレスボートに乗り、サパーンプットで下船。船はグティジン地区の反対側に停まるので、橋を渡って対岸に行く。橋を渡った後リバーウォーク(河岸の遊歩道)を歩いて行きたいところだけれど、道は途中で行政事務所の敷地内に入ってしまうので、大きくカーブする道を道に沿って歩く。テーサバンサーイ1(เทศบาล สาย1)通りという通りが見えてくるので、右折してテーサバンサーイ1通りを歩く。道は途中でソイアルンアマリンという名前に変わるけど、名前が変わる直前にソーイグギジーン1(ซอย กุกีจีน)という名前の小道があるので、右折してそのソイに入る。道なりにずんずん歩くと私有地みたいになっているエリアに出るが、それがちょうどサンタクルーズ教会の裏側。

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2011年、タイ在住の頃にブログを開設。現在は日本に帰国し九州地方に生息中。(実家は京都なので、京都のタイ料理屋を巡るのも趣味。)現在も年に1回はタイに遊びに行き、美味しいものを食べ歩いている。

 

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